2010年9月12日日曜日

上流工程の生産性を上げるツール

おはようございます。

今朝の飯綱町はちょっと曇り気味で、時折小雨も降っています。


本日は、上流工程の生産性を上げるツールというテーマで書いてみたいと思います。


上流工程の仕事はひたすらドキュメンテーション!
私が主に書くドキュメントは次のようなものです。
  • 情報システム活動計画書  
  • RFP
  • 要件定義書
  • 業務フローチャート
  • 業務記述書
  • ユースケース図
  • ネットワーク構成図
  • システム概念図

これらのドキュメントを書いていく上で、いかに早く正確にドキュメントを記述できるかは、私にとっての死活問題です。

フリーランスの技術者という商売は、多くが自分の時間を切り売りして収入を得ているので、収入を上げようとすると時間当たりの単価を上げるか、長時間働くかの2社択一になります。

もちろんこれ以外にも、自分で開発したソフトウェアのライセンスフィー収入や、著作からの印税収入なども見込むことはできますが、これができる技術者はなかなかいないのではないでしょうか。

そうであれば、時間単価を上げるか、長時間労働をするかの2社択一になります。

個人的には両方必要だと思いますが、時間単価を上げるということはすなわち短時間で人よりも多くのアウトプットができることが絶対的な条件になります。

ちなみに日本のSE単価は、ほとんどが勤続年数や相場など、その技術者の実力とはかけ離れたところで決まる部分があるので、エンドユーザ的に「ババを引いた…」と思うのは、時間当たりのアウトプット能力が低い技術者に当たってしまったときですよね…

特に上流工程は、特に情報の抽象度が高い工程を相手にするので、抽象思考やイメージ能力が高い技術者と、そうでない技術者のパフォーマンスには雲泥の差が出ます。

短時間で多くのアウトプットができて、さらに長時間労働ができる集中力・体力・モチベーションがあることが、フリーランスの技術者が最も確実に自分の価値をあげることができる手段になります。

そういえば長時間労働は、ランチェスター経営・「弱者の戦略」でもありましたね。

さて、前置きが長くなりましたが、このような上流工程で作成するドキュメントをいかに効率よく作成する「ツール」について書きたいと思います。

私はこれまで数あるシステム開発プロジェクトを経験してきましたが、SEさんによってドキュメントを記述するソフトウェアは様々です。



上流工程で使うプロ仕様のツール


フローチャートをExcelやパワーポイントで書く人。

フローチャートだけでなく、ネットワーク構成をはじめとする上流工程全てのドキュメントをExcelだけで書く人。(Excelって偉大だなぁ~)

もちろん、こういったツールの選択が「悪い」というわけではないのですが、個人的に思うのが、プロなんだからプロが使う道具で仕事をしましょうということです。

例えばフローチャート。

特に上流工程で必要となる部門間連携を表現するレーン付きのフローチャートや、産能式事務工程図を書く場合、とてもExcelやPowerPointで書ききれるものではありません。

もちろん手間と時間をかければ書くことはできるのですが、追加・修正などのことを考えるときわめて効率が悪くなります。

フローチャートであれば、それ専用のツールを使うのもプロの条件のひとつだと思います。

プロであれば、他人より圧倒的に早く仕事ができることもプロたる条件。

であればフローチャートを描くにはVisioや、ちょっと値は張りますがXUpperやJUDE/Bizといった専用ツールを使うべきです。

もし会社がそういったツールを買ってくれないというのであれば、そんな会社はさっさと三行半をたたきつけるべきです。(笑)

まぁ三行半というのは行き過ぎかもしれませんが、そこの経営者は、適切なツールの選択による生産性の向上と利益の増大よりも、目先数万円のキャッシュがもったいないという感覚なので、既に経営者としての視点は持っていないということでしょう。

そんな会社は遅かれ早かれ行き詰るのが目に見えています。



一番大変なのは、膨大な関連情報の整理と数百ページになるワープロ文書


先に書いたとおり、フローチャートをはじめとする特殊なドキュメントには、それを補完するためのプロ用ツールが出ているのでそれを使うことがプロとしての生産性を挙げてくれる重要なファクターであることは明白だと思います。

またこれ以外にも、ネットワーク構成やシステム概念図、ER図や簡単なGUI設計ツールもプロとしてしっかりと揃えておきたいところです。

さて、そんな上流工程の中で使用するツールでも、「プロ用」と分類できるようなツールが無いのがワープロです。

要件定義書やRFPは、最終的にワープロ打ちしてA4のドキュメントで納品するのが大体のパターンだと思います。

しかし、このワープロについてはプロ用と呼ばれるツールがありません。

要件定義書やRFPは、しっかりとやればやるほど、記述する内容は膨大になります。

技術要求・業務要求・非機能要求など、頭の中にぼんやりならイメージできるものでも、いざそれを正式な要求・要件として文字にしようとすると、膨大な量になります。

これを章立てして、論理的な構造で組み立て、さらにプロジェクトの利害関係者の誰が呼んでも一定のレベルで理解できる文言で書くのは、極めて手間のかかる作業です。

例えば一般的に3000万レベルの小規模プロジェクトでも、教科書どおりの要件定義やRFPを作成すれば、ドキュメントの記述量はA4用紙で直ぐに100ページを越えます。

こんな膨大な文書を書くのに、いきなりまっさらのWordを開いてゴリゴリ入力していくのは極めて非効率的です。

そこでは私は、この作業にFreeMindを使っています。



FreeMindは上流工程の乗り切るためのプロ用ツールになる。

FreeMindはいわずと知れた(?)、マインドマップ風アウトラインプロセッサ。

生粋の(?)マインドマッパーからいわせていただくと、これはマインドマッピングのツールではなく、アウトラインプロセッサです。

しかし、個人的にはこれが上流工程の作業で最も活躍するツールかも知れません。

先にも書いたとおり、上流工程で作成するドキュメントの特徴は、記載する項目が多岐にわたり、アウトラインが何階層にもわたって深くなるということです。

また、アウトラインごとに関連付けて記述したいことが多々あるのもこれらのドキュメントの特徴です。

例えばある業務要件と技術要件が密接に絡み合っている場合、できれば「○○を参照」と入れたいですし、書く側としては容易にその参照先にジャンプできること生産性があがります。

さらに、ある章の内容を書いているときに、ふと他の章の追加記述や、システム化のアイデアが浮かぶもありますし、エンドユーザへの質問事項が頭に浮かぶこともあります。

そういったものは忘れないうちに文字にしておくと、後から思い出す必要も無く、忘れてしまうというロスもなくなります。

こういった一連の作業を効率よくできるのがこのFreeMindです。

例えばエンドユーザに確認しなければならない事項が出てきたら、関連するブランチにノートとして記述し、[?]などのアイコンをつけておけば、次回のヒヤリングで漏れなくそれを訴求することができます。

また、ふとしたシステム化のアイデアも、関連するブランチにノートとして記述しておき、電球アイコンなどをつけておけば、エンドユーザに漏れなく提案することができます。

さらに、ドキュメントを記述中に出てきたToDoもすばやく記述して、チェックマークなどのアイコンをつけておけば、ToDoを漏らすことがありません。

ここでFreeMindの素晴らしいのが、アイデアでも質問事項でもToDoでも、何をしているとき、何を考えているときにそれが生まれてきたかを関連付けて記録することが可能なことです。

これが別のノートやToDoリストに書き出してしまうと、「これは何の作業をしているときに出てきた質問事項だ?」となってしまいます。

FreeMindを使うと、そういった「何を源泉にこのToDoや質問が湧いてきたのか?」が、直ぐにわかります。

さらに素晴らしいのが、これらの質問事項やToDoを数あるブランチから一瞬にしてソーティングして一覧化することができることです。

マインドマップの原則を守るとありえないことですが、RFPや要件定義をFreeMindで書いていると、A0サイズの紙で印刷してもまだ足りないぐらいの大きさになります。

それだけの文書から、あるところに記述したToDoや質問事項を見つけ出すことが、FreeMindでは簡単にできてしまうのです。

もちろん、これ以外にもFreeMindを使った「上流工程ハック」はたくさんあります。

外部ファイルへのリンク埋め込みやURLリンクの埋め込みを使えば、周辺資料のまとめも極めて効率的にできますし、ドキュメントの作成時にも、あらかじめ全てのアウトラインをブランチとして書き出しておけば、書ける所から書いていくという作業が可能です。

ワープロだとどうしても頭から書いていくので、あるところで躓くとその先がどうしても進まなくなります。

こういった躓きによる作業中断がFreeMindを使うとかなり解消できます。

これらFreeMindを使った「上流工程ハック(?)」は、それこそ相当な量のドキュメントを書く必要があるので、また別の機会に詳しく書きたいと思います。



情報は全てFreeMindにまとめなさい?
今回はFreeMindを使った上流工程作業について書いてみました。

FreeMindは別にプロ用のツールというわけではなく、価格もフリーです。

上流工程を「Excel」と「Word」だけでがんばっている技術者さんには、ぜひ知ってほしいツールになります。

上流工程では、とにかくMECE精神で関連する多くの情報をかき集め、論理的に整理して問題点を定義し、バラバラと出てくる改善点も同じく論理的にまとめて要求・要件を定義していく作業、そしてそのかき集めた情報を文字化していく作業がその大半になります。

この作業を極めて効率的に行えるのがFreeMindです。

ちょっと前に「情報は全て100円ノートにまとめなさい」という本が出版されていましたが、私の場合は全てFreeMindにまとめなさいといったところですね。


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株式会社ライジングサン・システムコンサルティング
岩佐和紀
URL : http://www.risingsun-system.biz/
認定資格 :
 上級システムアドミニストレータ
 FileMaker認定デベロッパーVer10/11

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