2012年10月19日金曜日

経営層と情報システム部門の乖離を解決しよう

昨日は「情シス部門の戦略部門化、ふたたび」というタイトルで、情報システム部門が戦略の立案と実行をマネジメントする「戦略部門」に生まれ変われない3つの理由を上げました。

今日はその中の、「経営層と情報システム部門の乖離」にスポットを当て、その解決方法について、自分の経験談も交えながら考察していきたいと思います。

まず、経営層と情報システム部門の乖離に関する定義をしておきたいのですが、ここでは「双方の信頼関係の欠如」ということで定義したいと思います。

簡単にいうと・・・

経営層から情シスをみても「何をやっとるかわかん。」

情シスから経営層、特に社長を見ても「何を考えとるかわからん。」

こういう状態ですね。

多かれ少なかれ、どんな会社の情シスと経営層も似たような感情を双方に対して感じた経験はあると思います。

じゃぁ簡単な話で、お互いに何を考えているか、お互いに何を期待しているのかを、腹を割って話しあいましょうということになるのですが、ここが一筋縄ではいきません。

一筋縄ではいかない理由はいくつかあります。

例えば、情シスは経営のことが分からず、経営層はITの事がわからないといった原因はよく見聞きすることだと思います。

これについては、もう「情シスが経営の勉強をしましょう!」ということに尽きるのですが、具体的な勉強方法等については、その類の本もたくさん出ていることですし、今回は見送ることにします。(後日書きます!)

そして今回は、「経営層と感情レベルの信頼関係を構築する」というテーマにフォーカスして考察していきたいと思います。

多くのシステム技術者は、IT技術の本はたくさん読んでも、心理学や脳科学、NLP関連の本を読む方は少ないのではないでしょうか。

中には技術書も読まない、こまったエンジニアさんもいますが・・・

私は5〜6年前から、心理学系の本を読んだり、心理カウンセラーのトレーニングを累計で約150時間受講したりと、システム屋のサブスキル強化として、そういった勉強をしてきました。

きっかけは、子どもを授かったことですね。

やっぱり子供と親の信頼関係、特に父親と子どもって、母親と子どものようには行かないので、この手の知識があるのと無いのとでは、信頼関係の強度が全然違ってきます。

そんな勉強から得た知識と、実体験で成功した事例を元に、経営層と情シススタッフとの感情レベルにおける信頼関係の構築の仕方について書いてみたいと思います。

テーマは3つ。

1つめは、経営者の心理的内面を知る。

2つめは、顔の構造から経営者の特質を知る。

3つめは、ランチに誘うです。

1.経営者の心理的内面を知る。

心理学をある程度勉強したことがあれば当たり前の理論なのですが、その人が表に出している感情や正確は、その人が持っている本質の部分のウラ返しになっています。

例えば、表に出ている正確が豪快でポジティブで、俗にいう「イケイケドンドン」的な人というのは、実は内面が非常にナイーブで傷つきやすく、また非常に疑い深い性質を持っているケースが多いです。

特にご自身で起業された中小企業の社長さんにはこのタイプが非常に多いです。

このタイプの方と信頼関係を構築するのに有効な手段は、まずいきなりダメ出しをしないこと。

次に、その社長さんの表に出ている性格をひっくり返して褒めるということです。

順に説明しましょう。

まず「いきなりダメ出し」ですが、これをやって失敗する情シススタッフ、もしくは
コンサルさんもですが、実は非常に多いです。

多くの情シススタッフorコンサルさんは、自己アピールも含めて、経営者に社内の問題点を明確にし、その解決策を提示しようとします。

しかも、いきなり核心をつくような「重いテーマ」の問題を提示してしまうことが多々あります。

これは特に問題を提示する側が極めて有能で、スキルが高い人達に良くある傾向です。

こういう人は有能なので、極めて短期間で問題の核心的な部分が見えちゃうんですね。

そしてその解決策もズバッとわかる。

しかし、その持って行き方として、いきなり「うちの会社の問題点はこれです!」っと、幾つもの問題を提示してしまう、もしくは核心的な部分の提示をしてしまうと、感情レベルでの信頼関係構築という観点からは、非常に大きなマイナスになってしまいます。

問題点の明確化というと言葉はカッコイイのですが、ぞくな言葉で表現すると、これはまさに「ダメ出し」なのです。

先にも書いた通り、イケイケドンドン的な社長さんの内面は非常にナイーブです。

社長さんにとって、自分の会社は手塩にかけて育ててきた子どもそのもの。

その大事に育ててきた子どもに対して、いきなり何処の馬の骨ともワカラン人間から、あれもダメ、これもダメと、次々にダメ出しされると、その親としての気持ちはどうなるでしょうか?

私だったら、まず1回は拳で・・・(以下、自粛)

表面的にはいろんなリアクションはあると思いますが、内面では必ず強い敵意をいだきます。

相互理解が必要な相手に敵意を抱かせたら、もうおしまいです。

どんなに論理構成がしっかりした提案や企画を持って行っても、理論的・非理論的あらゆる手段を駆使して、その企画が潰されます。

もしくは、一時的に企画が通ったとしても、そのプロジェクト進行の過程で、必ず問題が出てきます。

ただ、この感情的な綱引きや対立は、本人同士も意識できない潜在的な部分で起こっているので、なぜうまく行かないのか、本人同士もよくわからない。

でも「なぜか上手くいかない」状況に陥り、それが相互の感情的レベルにおける乖離につながっていきます。

これを避けるには、その会社で「既に達成していること」もしくは「強みと思われるもの」をしっかりとフォローし、それらの強みをより確実に、強固にするために、ステップバイステップで、こういうことを強化しましょうという持って行き方をします。

言われてみれば当たり前の話ですが、まず会話をするには、相手に耳を開いてもらわなければなりません。

もちろん、人間ですから物理的に耳を閉じることはできないのですが、心理的に耳を閉じることというのは、人間、日常茶飯事でやっています。

簡単にいうと、感情的に聞きたくないことには耳を開いていません。

逆に人間は、感情的に聞きたいことに対してのみ耳を開きます。

なので、まずは相手の耳を開いてもらうということが非常に重要なのです。

そう考えると、聞くという漢字は、門と耳の組合せ。
本当に良くできていますね(笑)

まぁ、日産のゴーンさんのように、「いいことは聞きたくない。会議の場では問題だけを議論する。」というのも素晴らしいのですが、これはほんのごく一部の「プロ経営者」のみに通じることだと思います。

まずは、その会社の強みややってきたことに敬意を払い、その部分をしっかりとフォローした上で、より良く成長するためには・・・っという切り口で持っていくのが、経営者とのより良い感情レベルにおける信頼関係を構築するコツになります。

次に、ひっくり返して褒めるということについて説明します。

これは先程も書いた通り、人間が表に出している特性・性格というのは、その人が内面に持っている本質的性格のウラ返しです。

なので、表に出ている特性をひっくり返して褒めるということは、その人の内面深くを見て褒めるということになります。

例えば、豪快でイケイケドンドンな社長さんに、「いやぁ〜 社長はいつもエネルギッシュでポジティブで素晴らしいですね!」なんて行っても、表面的にはどう受け取るかわかりませんが、内面的には「お前に言われたくない」と思っています。

逆に、こういったイケイケドンドン系の社長さんは、時折精細な部分や感情的な弱さをぽろっとみせることがあります。

そういったときに、さらっとその部分を褒める、もしくは「わかります。その辛さ・・・」的なリアクションを返すと、実はもの凄く強固な信頼関係ができます。

端的な表現をすると、「こいつ、わかってるじゃん」となるのです。

正直、これはかなり強力なテクニックなのですが、自分自身がメンタル的にクリアでないと、なかなか使うのが難しい技でもあります(笑)

なので、このワザは、自分自身が何度か心理カウンセリング等のセッションを受けて、自分自身のメンタルが安定した状態で使うことをオススメします。

表面上のテクニックだけ真似ようとすると、これは相手が普段は鎧の下に隠しているものに触れる行為なので、下手にやると逆に激怒されることもありますので、注意しましょう。


いやぁ〜相変わらず文章が長い・・・orz



2つめの、「顔の構造から経営者の特質を知る」と、3つめの「ランチに誘う」は、明日以降に書きたいと思います!

2012年10月18日木曜日

情シスの戦略部門化、ふたたび・・・


おはようございます。

最新の日経コンピュータを読んでいたら、今回の号から新たに2つの気になる連載が開始されていました。

ひとつは「システム部門 再生の極意」、もうひとつが「いる資格、いらない資格」というタイトルになっています。

今回、双方の連載でキーワードとなっていたのが、如何にITを経営に活かすかというテーマです。

その根底にあるテーマの表現方法として、全社は「情シス部門の再生」そして後者が「資格」にスポットを当てているという印象を受けました。

ITを経営に活かす・・・

これは本当に古くて新しい問題です。

そもそも、ITの存在意義自体が経営をより円滑に、効率的に進めるためのツールであり、企業に情報システムが導入されて数十年、そのように活用して来られたはずなのです。

しかし今、またこのような「根本的な問い」にスポットが当たるようになってきました。

この背景について考察してみたいと思います。

私がこの業界で働き始めて約20年なのですが、過去にも何度かこの話題にスポットが当たることがありました。

例えば今から12〜15年ほど前、企業ではメインフレームやオフコンといった大型コンピュータから、「ダウンサイジング」という旗印のもと、オフィスで利用するコンピュータの主役がPCに移ってきた頃です。

この頃に言われたのは「情シスの戦略部門化」

当時提唱されていたコアのメッセージというのは、煎じてつめると「アウトソーシング」です。

情シス部門は、経営層と一体となってIT戦略を作り、それを実行、マネジメントする。

それら以外の機能は、ITの専門企業へアウトソーシングして、情シスを戦略部門に生まれ変わらせましょうという主旨です。

このトレンドの中で、実際に世の中ではアウトソーシング化が大きく進みました。

「戦略的アウトソーシング」という言葉が生まれ、社内の情報システム部門には戦略の立案と実行をマネジメントする精鋭だけが残り、トレンドの早い技術的な仕事はプロにアウトソースされて行きました。


「戦略的アウトソーシング」という言葉が生まれ、社内の情報システム部門には戦略の立案と実行をマネジメントする「アタマ」だけが残り、トレンドの早い技術的な業務、つまり「手・足」はプロにアウトソーシングされて行きました。

・・・が、しかし、情シスの戦略部門化が達成できた会社は恐らく全体の10%にも満たないのではないでしょうか?

もちろん、情シスの戦略部門化に成功したという事例も幾つか見聞きします。

例えば、ユナイテッド・アロウズさんであったり、東急ハンズさんであったりというのは、頭と手足の切り分けがうまくいった好例として、よく見聞きします。

しかし、多くの情シスさんは、自社で保有しているシステムの内部構造も分からず、利用部門や経営層からの質問にも的確に答えられない、改善案も提案できない、気が付けばアウトソーシング会社におんぶにだっこの状態で、「社内の御用聞き部門」と化している情シス部門のほうが多いのではないかと思います。

この状況を憂いで、大手企業を中心に、アウトソーシングしていた技術的な業務を再び内製化する動きもあるようです。

しかし、これは個人的な意見ですが、技術的な仕事をアウトソースすることに関しては正解だったのではないかと思います。

もちろん体力のある企業で、自社内に技術者を抱えられ、その技術者さんに対して社内における明確なキャリアパスを提示でき、何よりも技術力の向上が給与の評価に大きく考慮されるような人事システムを構築できる企業さんは内製化して、技術者を抱え込むという選択肢もあると思います。

しかし、多くの中堅・中小企業では、そのような組織、及び人事制度を構築するのはほぼ不可能だと思います。

特に、技術力の向上と昇給に相関関係を持たせるような人事システムというのは、社内で優秀な技術者を囲い込むためには不可欠な要素だと思うのですが、ユーザ企業に「優秀な技術者」を評価する基準・風土をもった企業さんはほぼ皆無でしょう。

ということで、技術部分のアウトソーシングというトレンドは、個人的には良かったと思っています。

では、なぜ「情シス部門の戦略部門化」は進まなかったのでしょうか?

私も、まさにこのトレンドのまっただ中で、情報システム部門の仕事をしていましたので、いろんな思いはありますが、強い自戒の念を込めて、冷静に考えると、大きく3つの理由があるのではないかと思います。

ひとつ目は「経営層と情報システム部門の乖離」2つ目は「戦略部門の具体的機能が不明確」、最後の3つめが「情シス人材の流動化」です。

この3つの問題はそれぞれが絡み合ってそれらを構成しているので、どれかひとつを解消すれば良いというものではなく、複合的に対応すべき問題です。

明日以降、これらのことについて、考察を深めていきたいと思います。